2004年春より1年間ドゥカティマガジンに出稿させて頂いていた、ドゥカティオヤジのシングルレーサー参戦記。この度最終号分の転記許可を頂きました。1年前の事ですが今でも鮮烈な思い出として心のまん中に陣取ってます。
意味不明のスッキリ感……なんで?と思うくらいスッキリ目覚めたレース初日早朝6時。「覚悟決めたって訳?」自分に聞いてみたりして。行くっきゃ無い! もんね。さー、53歳デイトナ・デビュー。
20年近く接している我がモンジュイ、空ぶかしでほとんど全てが計れる自分になってます。とりあえず日本より10番大きいメーンジェットに交換。 「スゲー! ちゃんと燃えとる。噂通りじゃ」こぼしたガスがアッという間に蒸発する、火炎伝播が異常に早い、オクタン価の高い悪魔のデイトナガス。日本のガスじゃ100%カブッてしまう筈。ひとつ間違うと即ピストンに穴が開きます。
セオリー通り、濃い目のセットで第1回目のフリープラクティスに臨みます。ドクドク・ドクドクと今にも爆発寸前状態に陥った我が心臓。初めてバイクに乗ったあの日もこうだった。
いよいよコースイン。箱詰め前に慌てて組んだミシュラン・パイロットパワーの皮むき……を言い訳にしてソロリ・ソロリと走ります。昨夜穴の開くほど見たコース図を思い出しながら。「アメリカらしくシンプルなコースじゃ」と思ってたインフィールド。トコロがどのコーナーもえげつない程奥に行くにつれて曲がりこんだ複合コーナーの連続。全くカントが付いていない上にツギハギだらけの路面が、いつもの広域農道を連想させます。差し掛かったバンク入り口。予定通り? いやビビッたオヤジは一番下のフラットな所をソロリ・ソロリと走ります。右側はそそり立つ壁。「昨日見たヤツラはあの一番上走っとたよな」
2周目、タイヤもサスも温まった我がモンジュイは「全開OK」の指示をくれました。ヨーッシと意を決して前車に続きマス。バンク制覇! 絶対最上段迄上がるぞ! 裏ストレート終わりのシケインを3速全開で立ち上がると自然にバンク上段に向かって進む我がモンジュイ。4速にシフトアップした所で左下に見えたのはトランポの天井。すかさず5速にシフトアップ。ウワー首が・首が・そう噂に聞いてた縦Gの初体験です。見えない巨人の大きな手のひらがジワーっと我が頭を抑え付けてきます。当然サスもフルストローク、路面の継ぎ目がダイレクトに車体を揺らすものだから見える景色が上下左右に動きマス。とりあえず大きな左コーナーと考えてアウト側のフェンスは絶対見ない様に……。遠くの左斜め下に目線を据えてひたすら全開。1万回転迄廻る我がモンジュイのエンジン。ヤッパ濃すぎたか9000回転で延々と止まったまま。走行抵抗とエンジンパワーがバランスした時間が永遠と続きます。意識の半分以上エンジンの様子を気にしながらの気の遠くなる限界走行。
アットいう間に終わった初体験。ピットに戻った所で駆けつけてくれたのは根本さん。「オヤジー……飛ばしすぎだよ!」知らぬ間にリスクの高いトコロに身を置いてるんじゃないかと、心配して見ててくれたに違い有りません。「イヤーーー楽しい!」だれにも負けない笑顔で答えたボクでした。言葉に出来ないこの気持ち。
レースの方はどうだったかって?
全て最下位に違いないと思って走った今回の初挑戦、1日目決勝レースBOTF3クラス10位、サウンドオブサンダークラス13位。2日目は少し順位を上げF3クラス9位、サウンドオブサンダークラス11位で2日間のレースを人車共無事完走することが出来ました。ボクもバイクも完全燃焼!
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